e-モーターNVHシミュレーション:AVL EXCITE™ Mによる電磁励振解析
Published on January 07, 2026 · 2 min read
e-モーターにおける電磁励振は、NVH特性に大きな影響を及ぼします。トルクリップルおよび歯部電磁力(トゥースフォース)は主要な励振源として作用し、モーターの動的挙動およびNVH特性に影響を与えます。これらの励振は一定ではなく、ローター位置や回転速度、ローター偏心、電流高調波、さらにはコントローラー設定などの要因によって変動します。
例えば、e-モーターが発生するトルク変動であるトルクリップルは、トランスミッションやハウジング構造を介して振動として伝播する可能性があります。同様に、電磁相互作用によりステーター歯部に作用する歯部電磁力(トゥースフォース)は、ハウジングや関連部品を励振し、構造伝播音(構造起因騒音)を引き起こします。これらの励振はモーター構造と相互作用し、特定の振動モードを増幅させ、場合によっては共振を誘発する可能性があります。
EXCITE Mでは、これらの電磁励振をモデル化・解析し、NVH性能への影響を予測します。励振力をシミュレーションすることで、重要周波数や振動モードを特定し、設計パラメーター(例:ローター偏心やステーター歯形状)の影響を評価できます。さらに、不要な騒音・振動を低減するための設計対策を事前に検討することが可能です。これにより、モーターの円滑な運転を実現し、NVH性能要件の達成を支援します。
高精度なe-モーターNVHシミュレーションにおいて重要なステップの1つが、電磁励振データの抽出です。AVL E-Motor Tool™はこのプロセスを支援し、電磁分野の専門知識の有無にかかわらず、NVHエンジニアが必要な入力データを生成できる環境を提供します。基本的なモーター形状、材料特性、および主要な電磁パラメーターを入力するだけで、最小限の手動設定でシミュレーションワークフローを開始できます。
入力条件を定義すると、ツールは自動的にモデルを生成し、ユーザーは必要な出力項目を指定できます。その後、設定に基づいて2次元電磁界シミュレーションが実行され、通常はステーター電磁力、ロータートルク、その他NVH解析に必要な励振データが生成されます。得られた結果は、詳細なマルチボディ動力学解析を実行するためにEXCITE Mへシームレスにエクスポート可能です。これにより、NVH開発プロセスにおいて電磁解析と機械解析を円滑に統合できます。
EXCITE Mでは、e-モーターのローターおよびステーターを軸方向に複数のスライスへ分割してモデル化します。各スライスは、ローター本体上の1つのノードと、ステーター本体上の中心ノード、または円周方向に配置された複数のノードによって表現されます。通常、少なくとも1つのスライスが1つのモータースキュー区間を表します。e-モータージョイントは、これらのノードに励振を適用し、それぞれの運動応答(変位・速度など)を取得します。
EXCITE Mのe-モーターEMC(Electro-Mechanical Coupling:電気・機械連成)ジョイントで利用可能なワークフロー
- EMC Map-Based Workflow
ステーター電磁力およびロータートルクを事前計算する簡易な手法ですが、運転中の動的影響は考慮されません。 - EMC Parameter-Based Workflow
電磁力を動的に計算し、e-ドライブの運動およびトルク変動を考慮します。 - EMC File-Based C-C (Center-Center) Workflow
EXCITE M内でロータートルクを動的に計算し、運転条件に継続的に適応します。e-モーターコントローラーはジョイント内に組み込まれています。 - EMC File-Based C-S (Center-Surface) Workflow (most advanced)
c内でロータートルクおよびステーター電磁力を動的に計算し、運転条件に継続的に適応します。e-モーターコントローラーはジョイント内に組み込まれています。
EXCITE Mにおける励振特性とは、振動や騒音などの動的挙動を再現するために、システムへ適用される力やモーメントを指します。
「Center-Center EMC1」および「Center-Surface EMC2」は、e-モータージョイントにおいてこれらの励振を適用するための具体的な構成を示す用語です。
- Center-Center EMC1 この構成では、ローターおよびハウジングの中心ノードにトルクを適用します。ファイルベースの手法を用いており、機械系と電気系が連成された解析が実行されます。電磁シミュレーションからは、e-モーターコントローラー設定を含む詳細な入力データがジョイントへ提供されます。
- Center-Surface EMC2 この構成では、ローターの中心ノードにトルクを適用し、歯部電磁力(トゥースフォース)はステーターの円周方向ノードへ分布させて作用させます。
本構成は、ミスアライメントやローターの傾きといった偏心影響を考慮可能であり、ファイルベース構成により詳細な動的解析および音響解析を実行できます。また、e-モーターコントローラー設定に加え、PWM(パルス幅変調)の影響も考慮できます。
これらの構成は、異なる物理挙動を再現し、設計選択がシステム性能へ与える影響を評価するために用いられます。特にEMC2は、ローター偏心が振動および音響特性へ与える影響を検討する際に有効です。
e-モーターのスキューは、トルクリップル低減のために広く採用されている設計手法です。しかし従来の解析手法では、複数の2次元電磁界シミュレーションに依存しており、スキュー角度ごとに個別の計算を実行する必要があります。そのため、設計最適化の過程で複数の構成を評価する場合、計算負荷が大きくなるという課題がありました。
EXCITE MのEMC2連成機能を活用することで、この課題をより効率的なアプローチで解決できます。単一の2次元電磁界シミュレーションを用いて、各ロータースライスに対するステーター電磁力を算出できるため、スキュー角度ごとに個別の解析を実行する必要がありません。
スキューはローター側に適用され、シミュレーションモデルではローターは中心ノードで表現されます。そのため、スキューパラメーターを変更しても有限要素モデルを再生成する必要がなく、パラメータースタディを効率的に実施できます。これにより、NVHシミュレーション全体のワークフローを大幅に効率化できます。
シミュレーション結果:e-モーターのスキューとそのNVHへの影響
キャンベル図は、eモーターの NVH解析 において、構造振動、速度、加速度などの主要な指標を運転範囲全体にわたり可視化するために広く用いられています。これらの図はシステム挙動の包括的な把握に有効ですが、特定の励振源や高調波成分に着目した評価では解釈が難しくなる場合があります。
より詳細な解析を行うために、シミュレーションワークフローには特定の周波数成分を抽出するオーダーカット解析が組み込まれています。このオーダーカット解析により、支配的な励振オーダーの特定や共振条件の評価、さらに設計変更が振動および音響性能に与える影響を明確に把握することができます。
システム応答を評価した後、次にスキューを適用したローター構成における電磁励振挙動を検討します。本記事の例では、ローターは3つのスライスに分割されています。第1スライスは位相が進む方向にスキューされ、第3スライスは位相が遅れる方向にスキューされています。中央スライスでは、スキューあり構成とスキューなし構成の間に大きな差は見られません。
しかし、第1および第3スライスでは、励振のタイミングおよび発生する電磁力の振幅の両面において、ロータースキューの影響が明確に確認できます。これらの変化はシステム全体のNVH挙動に影響を与えるとともに、スキュー角やセグメント位置がローター構造内の局所的な力の分布パターンにどのように作用するかを示しています。
NVHシミュレーションの知見を活用した、e-モーターのトルクリップル低減
48スロットを有する本e-モーターに対応する48次オーダーの結果では、ステータ歯に作用する力に起因するトルクリップルが大幅に低減していることが確認されました。48次オーダーのシミュレーション結果は、ステータ歯力の影響に直接関連した顕著なトルクリップル低減を示しています。このオーダー別解析により、ロータースキューなどの設計対策が、e-モーターのNVHの要因となる高調波励振を効果的に抑制できることが明確に示されています。
ローターオフセットがNVHに与える影響
NVH性能に影響を与えるもう1つの重要な要因がローターオフセットです。これは、ローターがe-モーターの電磁中心からずれた状態で回転することを指します。この偏心は、製造・組立公差、軸受すきま、あるいは運転中の構造変形などにより発生します。
ローターオフセットには、主に次の2種類があります。
- Static offset – 製造・組立公差に起因し、電磁中心から一定量ずれた状態
- Dynamic offset – 動的荷重、軸受挙動、構造たわみなどにより運転中に生じ、時間とともに位置が変動する状態
スライスドローターのアプローチでは、オフセットによりチルト(傾き)が生じる場合もあります。これはローター軸とステーター軸が平行でなくなる状態を意味します。
偏心が発生するとエアギャップ分布が変化し、特定の電磁力高調波が増大する可能性があります。その結果、構造振動が増幅され、NVH性能に影響を及ぼします。
E-Motor Toolを用いることで、これらの影響を効率的にモデル化できます。
EXCITE MにおいてCenter-Surface EMC2ジョイントをパラメーター化するには、E-Motor Toolで2種類の2次元電磁界シミュレーションを実行するだけで十分です。
- オフセットなし(理想的な中心位置)でのケース
- 想定される最大のオフセットまたはチルトを考慮したケース
これらのシミュレーション結果に基づき、EXCITE Mは芯出し状態および偏心状態の両方に対する適切なステータ力を算出することができ、過剰なシミュレーション回数を必要とせずに詳細なNVH解析を実施することが可能になります。
NVHの励振源としてのパルス幅変調(PWM)
インバーターは、バッテリーから供給される高電圧の直流(DC)を、eモーターの駆動に必要な交流(AC)へ変換するパワーエレクトロニクス装置です。PWM(パルス幅変調)によってほぼ正弦波状の交流電流を生成し、パワーエレクトロニクスが電圧を高速でオン・オフ制御することで、所望の波形を近似的に作り出します。
このスイッチング動作により電流信号に微小なリップルが生じ、PWMパターンによって決まる離散的な高周波成分に集中した追加の電磁励振が発生します。制御方式によっては、PWMパターンは次のような特性を持ちます。
- 一定スイッチング周波数 – 回転速度に関係なく固定周波数
- 回転速度依存型 – モーター回転速度に応じてPWM周波数が変化
- ランダムスイッチング – 高調波エネルギーを広帯域に分散し、トーナルノイズを低減
NVH解析においては、PWMによる励振を考慮することが重要です。特に高周波域では、構造共振や他の電磁高調波と相互作用し、騒音の増加につながる可能性があります。EXCITE MのEMC2ジョイントを用いることで、これらの制御起因励振を電磁励振モデルに組み込み、設計初期段階から潜在的な騒音リスクを評価できます。
電磁励振は、e-モーターのNVH挙動を決定づける主要因であり、低次トルクリップルから高周波トーナルノイズまで幅広く影響します。本記事では、 ロータースキュー、ローターオフセット、PWM励振といった要因が力の分布パターンや振動応答を大きく変化させること、そして高度なシミュレーションワークフローにより、これらの影響を定量的に把握し、適切に管理できることを解説しました。
主なポイント:
- ロータースキューは重要オーダーのトルクリップル振幅を低減できる
- ローターのオフセットやチルトはエアギャップ分布を変化させ、追加の高調波を発生させる可能性がある
- PWMのスイッチングは高周波励振を生成し、構造と相互作用する
- EXCITE MのEMC2カップリングにより、少数の2次元電磁界解析結果からスキュー、偏心、制御に起因する影響を考慮した動的力計算が可能
- オーダーカットやキャンベル図などのターゲットを絞った解析結果により支配的励振源を特定できる
電磁励振の生成にE-Motor Toolを使用し、マルチボディダイナミクスシミュレーション用のEXCITE Mを組み合わせることで、電気的要因と機械的応答を単一の統合ワークフロー内で評価できます。この高忠実度アプローチにより、NVH問題の早期検出、設計トレードオフの迅速な評価、そして物理試作前段階でのe-モーター性能最適化が可能になります。
本トピックに関する実践的な活用事例と専門家による詳細解説については、ぜひ、ウェビナーをご覧ください。
NVHにおける電磁励振とは?
電磁励振とは、モーター内の電磁相互作用によって発生する力を指し、トルクリップルやステータ歯力を通じてNVHに直接影響を与えます。
なぜ高忠実度NVHシミュレーションを使用するのか?
高忠実度NVHシミュレーションは、複雑な動的相互作用を高い再現性でモデル化し、騒音や振動の問題を設計初期段階で特定・低減することを可能にします。
EXCITE MにおけるEMC1とEMC2構成の違いは何か?
EMC1はローターおよびステーターの中心にトルクを適用するのに対し、EMC2はステータ歯力をステータ周囲に分布させ、ローター偏心の影響を捉えて詳細なNVH解析を可能にします。
E-Motor ToolはどのようにNVHワークフローを簡素化するのか?
E-Motor Toolは2次元電磁界シミュレーションを自動化し、その結果をEXCITE Mにシームレスに統合することで、NVHエンジニアが高度な電磁解析を専門知識なしで実施できるようにします。
最新の情報をお見逃しなく
シミュレーションのブログシリーズをご覧ください。今すぐ登録して最新情報を受け取りましょう。
テーマについてさらに詳しく知る
最新のシミュレーションのブログ記事をお見逃しなく
シミュレーションのブログシリーズをご覧ください。今すぐ登録して最新情報を受け取りましょう。